一般演題

セッション:ポスター 6
セッション名:脳・神経
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:503会議室
演題順序:1番目

off-pump CABG中の視覚誘発電位の変化

福井医科大学付属病院 麻酔科 蘇生科
○森 芳映、江口広毅、石本雅幸、伊佐田哲朗、鈴木久人、冨士原秀善、福田 悟
心臓手術後視覚機能障害は約25%の症例に起こるといわれているがその原因は不明である.われわれは、術中視覚誘発電位(VEP)の測定がその原因・治療の探索に有効であると考え、off-pump CABGを受ける9名の患者の術前・術中のフラッシュ視覚誘発電位を測定しその問題点を明らかにしたので報告する.患者年齢59〜82歳(72±7歳:平均±標準偏差)、男:女=5:4.平均身長 157±8 cm 体重 56±10 Kg.このうち2症例に多発性脳梗塞の既往があったが、全例眼科的合併症はなかった.術当日、0.1 mg/kgモルヒネ筋注ののち記録針電極を後頭結節から5 cm頭頂(MO)に、基準針電極を両耳朶(A(+))に設置した.両眼にゴーグルを装着したのち閉眼安静とし、刺激頻度1Hzにて刺激し、波形を100回加算した.また、bispectral index(BIS)モニタを前頭部に装着しBIS値を連続記録した.麻酔はプロポフォール 1 mg/kg、フェンタニール 10μg/kg、パンクロニウム0.1 mg/kgにて導入し気管挿管した.以降、プロポフォール 4-6 mg/kg/hrで維持し、フエンタニールは適宜追加して総量30μg/kg投与した.VEPは導入時連続測定し、以降15分毎に測定した.なお、安静覚醒患者(成人)17例のVEP測定時の陰性波潜時は51.4±3.5 msec(N50)、陽性波潜時は74.1±12.9 msec(P75)であったので、N50、P75を指標として、その潜時および振幅(N50-P75)を測定した.また、P75/N50比も測定した.導入後、N50およびP75潜時は延長し、9症例中7例にてN50-P75振幅の減少がみられた.一方、手術終了時にはN50およびP75潜時延長およびN50-P75振幅減少(46±25%)が9例中7例でみられた.しかしP75/N50比は手術終了時ほぼ一定であった.BIS値とN50、P75潜時、振幅の変化に相関はなかった.VEPは大量フェンタニールにより影響されないことが報告されているので、VEPの潜時の延長、振幅低下はプロポフォールにより影響されることが推測される.Off-pump CABG時のVEP測定はプロポフォールによって影響され、潜時、振幅の変化は信頼できない.術中VEP測定時にはP75/N50比が有効かと思われた.