パネルディスカッション

セッション:パネルディスカッション(3)
セッション名:高齢者大動脈弁狭窄症を考える
日時:9月22日 10:00-11:30
場所:メインホール
演題順序:3番目

高齢者大動脈弁狭窄症に対する外科治療成績

神戸市立中央市民病院 胸部外科
○岡田行功
大動脈弁狭窄症の平均年齢は最近の3年間では66歳と10年前とは明らかに高齢となり、高齢者の大動脈弁狭窄症に対する人工弁置換術が増加しているので、われわれの手術成績、殊に最近臨床使用が可能となったステントレス生体弁(Freestyle弁)の成績を中心に検討し報告する。
【対象】1990年から大動脈弁狭窄症および狭窄症兼閉鎖不全症で人工弁置換術を受けた65歳以上の80例、年齢は65〜84歳(平均71±5歳)、男性38例、女性42例を対象とした。平均体表面積は1.47 M2 であった。用いた人工弁は機械弁14個、生体弁66個である。基本的にどの弁を用いる場合でもサイズ21mm以上で置換することとし、必要であれば弁輪拡大術を併せて行った。Freestyle弁以外で19mmを用いたのは 再手術例で機械弁(SJMHP)を用いた65歳の1例のみであった。生体弁66個のうち最近の22例で有効弁口面積が広いステントレス生体弁であるFreestyle弁を用いた。Freestyle弁の植え込み方法は主にsubcoronary法を用いたが、弁輪径の小さい症例やバルサルバ洞の石灰化、変形が著しい症例ではfull root法とした。体外循環は中等度低体温体外循環、心筋保護法は順行性あるいは逆行性にcold blood cardioplegia を15〜20分の間隔で投与し、大動脈遮断解除前はwarm blood cardioplegia を注入した。
【結果および考察】Freestyle弁を用いた大動脈弁置換術はsubcoronary法、full root法ともに大動脈遮断時間が従来の人工弁置換術よりも長かったが、体外循環からの離脱は右冠動脈の再建が不良であったために心不全で死亡した1例を除き良好であった。full root法ではsubcoronary法と比べ2サイズアップの人工弁が使用できた。術後急性期のICU管理においては血行動態が安定しておりカテコラミンの投与量も少なくてすみ、在室日数が短縮された。術後遠隔期における大動脈弁位の最大圧較差、平均圧較差は有意にFreestyle弁で低く、遠隔期におけるLV Mass の改善も良好であった。
【まとめ】狭小弁輪を有することの多い高齢者大動脈弁狭窄症の外科治療では、周術期の経過および遠隔期の心重量の改善から見てステントレス生体弁の使用は有用な手術方法の一つであると考えられる。