一般演題

セッション:ポスター 12
セッション名:オフポンプCABG
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:406会議室
演題順序:5番目

AT-III低下症によるヘパリン不応症に対し、急遽オフポンプ手術に変更した冠動脈バイパス術の一例

自治医科大学 麻酔科学集中治療医学講座
○前田亮子、福田博一、中井川 泰、蛭田昌宏、平林由広、瀬尾憲正
【症例】74歳男性。155cm、49kg。三枝病変の不安定狭心症に対し、人工心肺下での冠動脈バイパス術が予定された。術前検査ではプロトロンビン時間や部分トロンボプラスチン時間は正常であった。フェンタニル0.2mg、ミダゾラム5mg、ベクロニウム6mgで麻酔導入し、気管内挿管後、プロポフォールとフェンタニルの持続投与により麻酔を維持した。活性凝固時間(ACT)の対照値は124秒であった。人工心肺装着のため、ヘパリン10,000単位を投与し、3分後ACTは436秒まで延長した。人工心肺を開始したところACTが128秒まで短縮したため、回路内にヘパリン5,000単位の追加投与を2回行ったがACTは174秒までしか延長せず、回路内に血栓が生じたため、人工心肺を直ちに停止した。さらにヘパリン5,000単位の追加投与をおこなったところ、ACTは362秒まで延長したが、原因がわからないため急遽オフポンプ手術に変更した。一時間後、この時のAT-IIIの結果が判明したが、51.8%と低値であった。オフポンプ手術中の循環動態は安定しており、予定通りの三枝バイパスを行うことができた。術後の経過も順調で、合併症なく3週間後に退院となった。
【考察】AT-III低下症例でのヘパリン不応症に対し、アルガトロバン併用の有効性を示した症例報告がある。しかしながら本症例ではAT-IIIの測定結果が判明するまでに1時間程度を要したため、原因不明の時点でのアルガトロバンの使用は躊躇された。術者との話し合いにより急遽オフポンプ手術となったが、安全に手術を遂行することが可能であった。オフポンプ手術への変更は、ヘパリン不応症に対する一つの対処法となりうる。
【結語】AT-III低下によると思われるヘパリン不応症に対し、急遽オフポンプ手術に変更となった冠動脈バイパス術の麻酔管理を経験した。