一般演題

セッション:ポスター 4
セッション名:非心臓手術
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:406会議室
演題順序:6番目

初診時胸痛とST上昇より急性心筋梗塞を疑った脳動脈瘤破裂くも膜下出血の一症例

大阪府済生会吹田病院 麻酔科 集中治療部1
大阪府済生会吹田病院 循環器内科2
大阪府済生会吹田病院 脳神経外科3
○藤田章子1、松山広樹1、高野泰明1、高瀬栄司2、小林敦子1、堀川義治3、川村光喜1
救急外来受診時、胸痛および心電図所見より急性心筋梗塞(AMI)を疑ったが冠動脈造影(CAG)、CT、髄液検査、MRIより、くも膜下出血(SAH)に伴う心筋障害と考えられた症例を経験した。
[症例]68歳女性。老人性うつ病、高血圧にて内服加療中であった。胸部不快感、全身倦怠感を主訴とし、救急受診時心電図上V1−4のST上昇、II、III、aVF、V3−6の陰性T波があった。受診8日前にトイレでいきんだ時に頭痛が出現していたが、明らかな神経学的異常はなくAMIを疑いCAGを行ったが冠動脈の狭窄や攣縮はなかった。左室造影で心尖部のakinesisがあり生化学検査でAST、LDH、CPKの上昇がなく、たこつぼ型心筋症と診断された。集中治療室にて硝酸イソソルビド、ニコランジル、アスピリン投与を開始した。血圧は170/70mmHg、心拍数65/min、心係数2.6l/min/mであった。入院前より時々頭痛があるため行った脳CTでは特に所見なく、髄液検査のキサントクロミーで脳血管障害を疑った。MRIで高信号域が認められSAHが強く疑われた。脳血管造影で左IC−PC動脈瘤が見られた。カテコールアミン値はアドレナリン0.16ng/ml、ノルアドレナリン0.92ng/ml、ドーパミン0.07ng/mlと上昇していた。意識レベルはJCSII−10であった。家族の希望があり保存的治療を選択し経過は良好であったが入院28日後、脳動脈瘤の再破裂を起こし死亡した。この経過中の心電図では経時的に陰性T波が深くなり、心筋シンチで心尖部に取り込みの低下があった。
[考察]脳血管障害に伴う心筋障害はSAH重症例に生ずることが多い。本症例では明らかな神経学的異常がなく、胸部症状を主訴とし心電図のST上昇、陰性T波よりAMIを疑った。脳CTでは特に所見なく、頭痛より髄液検査、MRI、脳血管造影をしなければ脳動脈瘤破裂のSAHを見逃す可能性があり、手術治療の選択機会を失いかねなかった。
[結語]主訴が胸部症状で心電図所見よりAMIを疑ったが、CAGで冠動脈の狭窄がなく、たこつぼ型心筋症と考えられる症例を経験した。軽度頭痛を伴っており、脳CTでは特に所見はないが髄液検査でキサントクロミー、MRIでSAH所見を認め、脳血管造影で脳動脈瘤の診断を得た。本症例の心筋障害はSAHに伴うものと考えられた。